第4回 MRP型と製番管理型の違い

◆生産管理は「受注形態」と「生産方式」で決まる

タイで工場を運営する場合、どのような生産管理方式を採用するかは非常に重要です。

生産現場に合わない管理方式を選んでしまうと、システムがうまく機能しないだけでなく、必要以上の在庫を抱えることにもなります。

まず、受注の形態から見ると、生産は大きく次の3つに分類できます。

  1. 見込み生産タイプ(繰り返し生産あり)
  2. 受注生産タイプ(繰り返し生産あり)
  3. 個別受注生産タイプ(繰り返し生産なし)

一方、生産工程の運用方法から見ると、主に次の方式があります。

  • MRP型(中間仕掛在庫を持つ)
  • 製番管理型(中間仕掛在庫を原則として持たない)
  • MRP型と製番管理型のミックス型
  • ジャストインタイム生産方式(カンバン方式)

この中で、特に理解しておきたいのが、MRP型と製番管理型の違いです。

◆MRP型と製番管理型では「在庫の考え方」が違う

MRP型は、加工業など、工程数が多く、加工そのものに時間や難しさを伴う生産現場で多く採用されます。

材料や部品を必要なタイミングに合わせて計画的に投入し、各工程で加工されたものを中間仕掛品として次の工程へつないでいきます。

つまり、工程と工程の間に中間仕掛在庫が存在することを前提とした管理方式です。

一方、製番管理型は、製品や受注ごとに製番を付け、その製番を軸として材料、部品、工程、原価などをひも付けて管理する方式です。

特に個別受注生産との相性がよく、組立型の製造業などで多く利用されます。

こちらは、各工程をできるだけ受注や製品単位でひも付けて管理するため、中間仕掛在庫をできるだけ持たない考え方になります。

したがって、両者の大きな違いは、

「工程間に中間仕掛在庫を持つのか、それとも製番を軸に工程をつなげていくのか」

という点にあります。

◆どの生産形態に、どの方式が向いているのか

一般的には、繰り返し生産が多く、部品の共用化が進んでいる量産工程では、MRP型との親和性が高くなります。

一方、個別受注で製品ごとの仕様が異なり、製品単位で材料や工程を管理する必要がある場合には、製番管理型が適しています。

また、すべての工程を一つの方式だけで管理できるとは限りません。

例えば、上流工程では部品を共用して量産し、その後の下流工程で個別の製品に組み立てるような工場では、MRP型と製番管理型を組み合わせたミックス型が必要になる場合があります。

つまり、生産管理方式は「会社全体で一つ」と決めつけるのではなく、製品や工程の特性に応じて選択することが重要なのです。

◆管理方式の選択は、在庫に直結する

生産方式を考えるとき、忘れてはいけないのが在庫です。

異なる工程が組み合わされた工場では、工程と工程の間に中間仕掛在庫が発生します。

もちろん、ある程度の安全在庫を持つことには意味があります。

安全在庫があれば、急な受注や工程の遅れが発生しても、納期を短縮できる場合があります。

しかし、在庫を持てば持つほど良いわけではありません。

過剰な中間仕掛在庫は、工程間のバランスを崩す原因になります。

さらに、材料や仕掛品が在庫として滞留すれば、その分だけ資金が拘束されます。

つまり、在庫は単なる「もの」ではなく、会社のキャッシュ・フローにも直接影響する経営資源なのです。

だからこそ、

「どの管理方式を採用するか」=「どこに、どれだけ在庫を持つか」

という問題でもあります。

◆自動車メーカーではカンバン方式

もう一つ代表的な生産方式が、ジャストインタイム生産システムです。

トヨタ自動車などの自動車メーカーで広く知られているのが、カンバン方式です。

カンバン方式では、工場内の前工程と後工程を連鎖させます。

後工程で部品が消費されると、その消費を合図として前工程が必要な分だけ生産する。

つまり、

「後工程が使った分だけ、前工程が作る」

という考え方です。

これは、需要を予測して大量に作り置きするのではなく、実際の消費を起点として生産をつなげていく方式です。

MRP型が「計画」を中心とした生産管理だとすれば、カンバン方式は現場における実際の消費を起点として生産をコントロールする方式ともいえます。

◆重要なのは「自社に合った方式」を選ぶこと

MRP型、製番管理型、ミックス型、カンバン方式。

どの方式が優れているということではありません。

重要なのは、自社の受注形態、製品の特性、工程の構造、そして在庫の持ち方に合った方式を選択することです。

タイで生産管理システムを導入する際にも、日本で成功している方式をそのまま持ち込めばよいわけではありません。

まず自社の生産現場を理解し、

「何を、どこまで計画し、どこに在庫を持ち、どこから先を実際の受注や消費につなげるのか」

を明確にする。

そこから初めて、自社に適した生産管理システムの姿が見えてくるのです。