第7回 タイでの固定資産

◆低額な固定資産

企業が固定資産を取得した場合、その資産を減価償却するという点では、タイも日本と基本的な考え方は共通しています。

しかし、**「同じ減価償却制度だから、日本と同じように考えればよい」**と思っていると、実務に入ったとき、その作業量の多さに驚くことになります。

タイの固定資産管理には、日本とは異なる特徴がいくつかあります。

その一つが、固定資産として管理する金額の基準が比較的低いことです。

一般的な目安として、1,000バーツから5,000バーツ程度の資産が固定資産として扱われるケースがあります。

そのため、パソコンや機械設備のような高額な資産だけではなく、事務用品や備品など、日常的に購入する比較的少額なものまで固定資産管理の対象となる場合があります。

そして、固定資産として認識された資産については、それぞれに資産番号を付け、取得日、取得価額、耐用年数、減価償却額などを管理する必要があります。

企業の規模が大きくなればなるほど、管理対象となる資産の数も増えていきます。

例えば、数千バーツ程度の備品を大量に購入した場合、それらを一つ一つ資産として登録し、管理しなければならないとすれば、入力作業だけでも相当な負担になります。

当然、手作業が増えれば入力ミスも増えます。

固定資産の金額が低いということは、それだけ管理対象となる資産の数が増えるということでもあるのです。

◆定額法でも簡単ではない減価償却

さらに注意しなければならないのが、減価償却の計算方法です。

日本では、資産の種類や用途によって法定耐用年数が定められています。

例えば、建物、事務机、椅子、パソコンなど、それぞれの資産について定められた耐用年数に基づいて減価償却を行います。

一方、タイでも定額法による減価償却が一般的ですが、月次で会計処理を行うというタイ独自の税務環境が、固定資産管理を複雑にしています。

タイでは毎月の税務処理が基本となっているため、固定資産についても毎月の減価償却額を正確に計算する必要があります。

さらに、取得日や使用開始日などによっては、実際の使用期間に応じた日割り計算が必要になります。

例えば、ある資産を月の途中で取得した場合、単純に「その月は1カ月分」と計算するのではなく、実際の日数を基準として減価償却額を計算することがあります。

月によって28日、29日、30日、31日と日数が異なるため、年間の計算だけを考えればよい日本の感覚とは異なる複雑さがあります。

しかも、その計算結果を毎月の会計処理に反映させなければなりません。

◆固定資産管理は「登録して終わり」ではない

固定資産管理というと、

「資産を登録して、毎年減価償却すればよい」

と考えがちです。

しかし、タイではそう簡単ではありません。

資産を取得した時点から、

取得 → 資産登録 → 資産番号付与 → 使用開始 → 月次減価償却 → 移動・廃棄 → 売却

という一連のライフサイクルを管理する必要があります。

さらに、それぞれの資産について、会計上の帳簿価額と実際の資産の状態を一致させる必要があります。

特に固定資産の数が多い企業では、これをExcelなどで人手によって管理することには限界があります。

取得した資産の登録漏れ、資産番号の重複、減価償却期間の間違い、日割り計算のミスなどが発生すれば、月次の会計処理にも影響します。

そのため、タイの固定資産管理では、減価償却計算だけでなく、固定資産そのものを正確に管理できるシステムが重要になります。

◆タイにおける減価償却制度の特徴

タイの固定資産管理について、特徴をまとめると次の3点になります。

  1. 固定資産として管理する金額の基準が比較的低く、管理対象となる資産数が多くなりやすい
  2. 月次で減価償却を計算・処理する必要がある
  3. 取得時期などによって、実際の日数に応じた日割り計算が必要になる

この3つが重なることで、タイの固定資産管理は非常に細かな作業になります。

つまり、タイの固定資産管理の難しさは、**減価償却の計算式そのものではなく、「大量の資産を、月次で、正確に管理し続けなければならないこと」**にあります。

このような業務を人手だけで処理するには限界があります。

だからこそ、タイ向けの会計システムには、固定資産の登録から減価償却、月次処理、廃棄・売却までを一貫して管理できる仕組みが求められるのです。