第8回 海外でのVoucherとはなにか

◆Voucher(バウチャー)とは
海外の会計実務では、**Voucher(バウチャー)**という言葉が頻繁に登場します。
Voucherとは、モノやサービスの売買などの商取引において、購入、引き渡し(受け取り)、金銭の支払い、代金の受領など、取引に伴う会計処理を行う際に作成する証憑書類のことです。
Voucherそのものを税務当局へ提出するわけではありません。
しかし、税務調査などの際には、取引の内容や会計処理の根拠を確認するために提示を求められることがあります。
そのため、Voucherは単なる社内書類ではなく、取引の事実と会計処理を結びつける重要な証憑として扱われます。
一般的に、一定期間の保存が求められ、タイでは5年間の保存義務があります。
◆Voucherの種類
海外の会計実務で使用されるVoucherには、代表的なものとして次のような種類があります。
- Account Receivable Voucher(売掛金Voucher)
- Account Payable Voucher(買掛金Voucher)
- Receipt Voucher(受領Voucher)
- Payment Voucher(支払Voucher)
- Journal Voucher(一般仕訳Voucher)
それぞれ、どのような取引を記録するのかによって使い分けられます。
◆Account Receivable Voucher(売掛金Voucher)
Account Receivable Voucherは、売掛金が発生したことを証明するVoucherです。
例えば、商品を販売してInvoiceを発行した場合、会計上は、
売掛金/売上
という仕訳が発生します。
このとき作成されるAccount Receivable Voucherは、Invoiceの発行と売掛金の計上を結びつける役割を持ちます。
つまり、
「この売上に対して、まだ回収されていない売掛金が存在する」
ことを証明する書類です。
◆Account Payable Voucher(買掛金Voucher)
これに対して、Account Payable Voucherは買掛金が発生したことを証明します。
例えば、商品やサービスを購入した場合、
仕入・経費/買掛金
という仕訳が発生します。
その根拠となるのがAccount Payable Voucherです。
注文時には、見積書やCustomer P/O(Purchase Order:注文書)などの関連書類が存在し、これらの書類とVoucherを関連付けて管理することで、
「何を注文し、何を受け取り、その結果として、いくらの買掛金が発生したのか」
を追跡できるようになります。
◆Receipt Voucher(受領Voucher)
Receipt Voucherは、売上代金などの現金・預金を受け取った際に作成するVoucherです。
例えば、売掛金を回収した場合、
現金・預金/売掛金
という仕訳が発生します。
この仕訳とReceipt Voucherが結びつくことで、
「どの売掛金を、いつ、いくら回収したのか」
を確認できます。
◆Payment Voucher(支払Voucher)
Payment Voucherは、反対に現金や預金を支払った際に作成されます。
例えば、買掛金を支払った場合、
買掛金/現金・預金
という仕訳になります。
Payment Voucherによって、
「どの買掛金について、いつ、いくら支払ったのか」
を確認することができます。
◆Journal Voucher(一般仕訳Voucher)
Journal Voucherは、売上や仕入、入出金以外の一般的な仕訳を記録するために使用されます。
例えば、減価償却、為替差損益、振替仕訳、その他の調整仕訳など、通常の売上・仕入・入出金とは異なる会計処理を行う場合に使用されます。
◆Voucherと仕訳の関係
Voucherを理解するうえで重要なのは、Voucherと会計仕訳が表裏一体の関係にあるということです。
例えば、
Invoice発行
↓
Account Receivable Voucher
↓
売掛金計上
そして、
入金
↓
Receipt Voucher
↓
売掛金消込
というように、商取引の流れと会計仕訳がVoucherによってつながっています。
同じように、
注文
↓
受入
↓
Account Payable Voucher
↓
買掛金計上
↓
Payment Voucher
↓
買掛金支払
という流れになります。
つまりVoucherは、単に「仕訳を印刷した紙」ではありません。
商取引の事実と会計仕訳の間をつなぐ証拠書類なのです。
◆なぜ海外の会計ではVoucherが重要なのか
日本の会計システムに慣れていると、Voucherという概念を特別に意識しないこともあります。
しかし、海外の会計実務では、取引ごとにVoucherを作成し、それをInvoice、P/O、Receipt、Paymentなどの関連書類とともに保存するという考え方が重要になります。
税務調査では、
「この仕訳は、何を根拠として計上されたのか」
ということが確認されます。
そのため、会計システムにおいても、単に仕訳を作成するだけではなく、仕訳の根拠となるVoucherと、その元となった取引書類を追跡できる仕組みが必要になります。
海外向けの会計システムを考える場合、このVoucherという考え方を理解しておくことは非常に重要なのです。
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