第16 回 Unamortization Tax

◆物販とサービスで異なるVATの処理
日本の消費税に相当するのが、タイの**付加価値税(VAT)**です。
タイでは、物販であるかサービスであるかにかかわらず、取引に対するVATを毎月申告・納税する必要があります。
しかし、ここで注意しなければならないのが、物販とサービスではVATを処理するタイミングが異なるという点です。
特にサービス取引では、日本の会計に慣れていると分かりにくい独特の処理が登場します。
それが、一般に**「Unamortization Tax」、タイ人の経理担当者の間では「アモーTax」**と呼ばれている処理です。
◆物販の場合――VATは先に処理する
まず、商品を販売する「物販」のケースです。
物販では、出荷などの取引が発生した時点でVATを処理します。
そのため、商品を販売してInvoiceを発行する際には、
Invoice / Tax Invoice
と記載します。
例えば、
商品価格 1,000THB
VAT 70THB
合計 1,070THB
であれば、Invoice発行時点でVAT 70THBを計上します。
その後、顧客から1,070THBの入金を受けた際に発行する領収書は、VATの処理自体はすでにInvoice発行時に行われています。
したがって、領収書は基本的に、
Receipt
として扱えばよいことになります。
つまり物販では、
出荷・Invoice発行
↓
VATを計上
↓
入金
↓
Receipt発行
という流れになります。
◆サービスの場合――VATの処理が入金時になる
ところが、サービス取引になると処理が変わります。
サービスの場合、VATの処理は入金を基準として行われるため、Invoiceを発行した時点では、まだVATとして処理しません。
例えば、サービス料金が1,000THBだった場合、
① Invoice発行
この時点では、
Invoice
として発行します。
そして、入金があった時点でVATを認識し、
Receipt / Tax Invoice
を発行します。
つまりサービスの場合は、
Invoice発行
↓
入金
↓
VATを計上
↓
Receipt / Tax Invoice発行
という流れになります。
◆Unamortization Taxとは何か
ここで問題になるのが、Invoiceを発行してから入金されるまでの期間です。
Invoiceを発行した時点では売上は発生しています。
しかし、VATについてはまだ処理できません。
そこで、Invoice発行時点ではVATをいったん**Unamortization Tax(仮受け的な税金勘定)**として処理しておき、入金された時点で正式なVATへ振り替えます。
概念的には、
Invoice発行時
売掛金 1,000THB
売上 1,000THB
VATについては、
Unamortization Tax 70THB
として一時的に管理します。
そして入金時に、
Unamortization Tax
VAT
という形で振り替えます。
この一連の処理を、実務上「Unamortization Tax」と呼んでいます。
タイ人の経理担当者の間では、これを省略して**「アモーTax」**と呼ぶこともあります。
◆なぜこの処理が必要なのか
一見すると、
「Invoiceを発行したのだから、その時点でVATを計上すればいいのでは?」
と思うかもしれません。
しかし、タイでは物販とサービスでVATの認識タイミングが異なります。
そのため、
Invoice発行日 ≠ VAT発生日
となるサービス取引が存在します。
会計システムでは、この時間差を正確に管理しなければなりません。
特に、
- Invoice発行
- 売掛金発生
- 入金
- VAT発生
- Receipt / Tax Invoice発行
をそれぞれ正しいタイミングで処理し、相互に関連付ける必要があります。
◆「サービス」の範囲は広い
ここでいう「サービス」は、一般的にイメージするコンサルティングや作業サービスだけを指すものではありません。
例えば、
- コンサルティング
- システム開発
- 保守サービス
- 各種業務委託
- 機器のレンタル
なども含まれます。
したがって、タイの会計システムを考える際には、
「物販以外の取引は基本的にサービスとして考える」
という認識を持っておくと理解しやすいでしょう。
◆物販とサービスの違い
両者を整理すると、次のようになります。
| 物販 | サービス | |
|---|---|---|
| VATの処理 | 取引・出荷時 | 入金時 |
| 最初の書類 | Invoice / Tax Invoice | Invoice |
| 入金時の書類 | Receipt | Receipt / Tax Invoice |
| Invoice~入金間のVAT | VATとして処理 | Unamortization Taxで一時管理 |
| VATへの振替 | 原則不要 | 入金時に振替 |
この違いは、タイの会計システムを設計するうえで非常に重要です。
◆会計システムに求められるもの
物販だけを扱うシステムであれば、この処理は比較的単純です。
しかし、製造業やIT企業などでは、物販とサービスの両方を扱うケースがあります。
その場合、
「このInvoiceは物販なのか、サービスなのか」
をシステム側で判断し、それぞれに異なるVAT処理を行わなければなりません。
さらに、サービスでは、
Invoice
→ Unamortization Tax
→ 入金
→ VAT
→ Receipt / Tax Invoice
という流れを正確に追跡する必要があります。
このように、タイのVAT処理は単に「7%を掛ければよい」というものではありません。
いつVATが発生するのか、そのタイミングを正確に管理することが重要なのです。
タイの会計が税務と強く結びついていることを、このUnamortization Taxの仕組みからも見ることができます。
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