第2回 BOIに対応した会計について

◆BOIの恩典と、それに伴う義務
タイで事業を展開するにあたり、**タイ投資委員会(BOI:Board of Investment)**との関わりは避けて通ることができません。
BOIは1977年に設置され、タイへの投資を促進するため、投資申請の認可や税制上の恩典の付与など、企業誘致の窓口として重要な役割を担ってきました。東京や大阪にも事務所が設置されており、日本企業がタイへ進出する前から相談できる体制も整えられています。
BOIの投資認可を受けることで、事業内容や認可条件に応じて、法人税の免除、輸入関税の免除など、さまざまな恩典を受けられる場合があります。また、通常の外国企業に課される一定の資本・雇用要件についても、BOIの認可によって緩和される場合があります。
しかし、ここで忘れてはいけないのが、恩典には、それに対応した義務が伴うということです。
その代表的なものが、会計上の 「BOI」と「NON-BOI」の区分です。
◆BOI事業とNON-BOI事業を区分する
BOIの認可を受けた事業から得られた収益と、それに対応する費用は、認可の対象となっていないNON-BOI事業とは明確に区分して管理する必要があります。
しかも、その区分は単純に売上だけを分ければよいというものではありません。
例えば、
- 工作機械などの設備
- 電気代・水道代
- 従業員の給与
- サーバーなどのIT関連費用
- 原材料や製品などの在庫
- その他の共通経費
といった、事業を運営するために必要なさまざまな資産・費用についても、BOIとNON-BOIの区分が問題になります。
しかし、ここで一つの疑問が生じます。
一つの工場、一つの事業所の中で行われている仕事を、どこまで「BOI」と「NON-BOI」に細分化できるのでしょうか。
例えば、一台の工作機械がBOI事業にもNON-BOI事業にも使われている場合、その設備費や電気代をどのように分ければよいのでしょうか。
従業員が両方の事業に携わっている場合、その給与をどのように配分するのでしょうか。
実務では、一定の基準や比率を用いて共通費用を按分する方法が採られることがあります。しかし、その方法や考え方は企業の事業内容によっても異なり、単純にシステムへ組み込めば済む問題ではありません。
◆BOIと会計システムの難しさ
会計ソフトの市場では、「BOI対応会計ソフト」などと謳ったサービスも数多くあります。
しかし、BOI対応の本当の難しさは、単に「BOI」という区分を会計システムに追加すれば終わるものではありません。
日々発生する取引を、どの時点で、どの基準によってBOIとNON-BOIに区分するのか。
そして、その区分を設備、在庫、経費、給与など、さまざまな会計情報とどのように結びつけるのか。
これらを一貫したルールで運用しなければなりません。
会計処理は月末にまとめて行えばよいものではなく、日々の取引の中で積み重ねていく必要があります。そのため、BOI対応を後から人手で行おうとすると、膨大な作業量になってしまいます。
さらに、BOIの恩典を受ける以上、その条件を満たせなかった場合には、恩典の取り消しやペナルティなどのリスクもあります。
◆「BOI対応」とは何なのか
BOI対応会計で本当に重要なのは、**「BOIの項目を持っている会計ソフト」ではなく、「BOIとNON-BOIを日々の業務の中で正しく管理できる仕組み」**を構築することです。
BOIは企業にとって大きな恩典をもたらします。しかし、その恩典を受けるためには、それに見合った管理責任が発生します。
したがって、タイでBOI企業として事業を行うのであれば、会計システムだけで解決しようとするのではなく、BOIの制度そのものを理解し、必要に応じて専門のコンサルタントや会計専門家に相談しながら、自社に適した運用方法を構築することが重要です。
BOI対応とは、単なる会計ソフトの機能ではありません。
それは、BOIの恩典と義務を理解したうえで、日々の企業活動そのものを会計に正しく反映させる仕組みなのです。
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