第12回 標準原価と実際原価

◆原価管理の役割

原価管理の基本的な役割は、標準原価を定期的に計算し、実際原価との差異を把握し、その原因を追究して経営情報につなげることです。

そして最終的には、原価情報を会計情報につなげていく必要があります。

しかし、海外の製造現場では、原価管理以前に、まず正確な在庫を把握すること自体が大きな課題となっている企業が少なくありません。

特に実際原価を計算するためには、

  • 原材料在庫(RM:Raw Material)
  • 仕掛品在庫(WIP:Work in Process)
  • 完成品在庫(FG:Finished Goods)

といった在庫の数量だけでなく金額まで正確に把握することが必要になります。

在庫そのものが正確に把握できていない状態では、実際原価を正しく計算することは困難です。

したがって、海外で原価管理を始める場合には、いきなり高度な実際原価計算を目指すのではなく、まず在庫管理を正しく行える状態を作ることが重要になります。


◆まずは標準原価から

原価管理を行う場合、まず取り組みやすいのが標準原価です。

標準原価とは、あらかじめ設定した標準的な条件をもとに、製品を1個生産するために必要となる原価を計算したものです。

原価を構成する要素のうち、直接費や間接費などをどのように算出するかは、企業の生産形態や管理方法によって異なります。

例えば直接労務費については、

作業者のチャージ金額 × 1単位を生産するための標準作業者工数

によって算出することができます。

また、海外の製造業では、材料を海外から購入するケースも多いため、標準原価を設定する際には為替レートの影響なども考慮する必要があります。

標準原価は、あらかじめ定めた一定の基準によって原価を把握できるため、原価管理の出発点として重要な役割を果たします。


◆難易度の高い実際原価

一方、実際原価の計算は、標準原価よりも難易度が高くなります。

標準原価では、あらかじめ設定した標準作業者工数などを使用しますが、実際原価では、実際の生産活動で発生した作業時間や作業工数を把握する必要があります。

つまり、生産実績として、

  • 何を生産したのか
  • 何個生産したのか
  • どれだけの時間がかかったのか
  • どれだけの作業者工数を要したのか

といった情報を正確にシステムへ入力しなければなりません。

これは現場にとって決して簡単な作業ではありません。

そのため、実際の作業時間や生産実績を正確に収集する手段として、バーコードシステムなどの導入が進められてきました。


◆在庫金額と原価計算

実際原価を計算するためには、生産実績だけではなく、材料、仕掛品、完成品の在庫を正確に把握する必要があります。

特に、

RM → WIP → FG

という生産工程における在庫の流れと、それぞれの在庫金額を正しく把握することが重要です。

そして最終的には、こうして把握された在庫金額や原価情報を会計情報へ反映させる必要があります。

したがって、原価管理は原価計算だけで完結するものではありません。

生産管理 → 在庫管理 → 原価管理 → 会計

という一連の流れを正しくつなげることが重要になります。


◆原価管理の前提は、正しい在庫と正しい実績

原価管理を考えるとき、計算方法ばかりに目が向きがちです。

しかし、実際にはその前に、

正しいマスター
→ 正しい生産実績
→ 正しい在庫
→ 正しい原価

という土台が必要になります。

在庫数量が合わない。

生産実績が正しくない。

材料消費が正しくない。

作業時間が把握できない。

このような状態で、いくら高度な原価計算の仕組みを導入しても、正しい原価を求めることはできません。

原価管理は、計算方法だけの問題ではなく、生産現場で発生する実績をどこまで正確に把握できるかという問題でもあるのです。