第13 回 ロット別在庫とロットトレース

◆ロットトレースの目的
ロットトレースの目的は、出荷した製品に何らかの品質上の問題が発生した場合に、その製品がどの生産ロット、どの原材料ロットから作られたものなのかを追跡し、他の製品やロットへの影響範囲を調査することです。
例えば、ある原材料に問題が発見された場合、その原材料を使用して生産された製品がどのロットに該当するのかを特定できなければ、影響範囲を判断することができません。
逆に、ロットトレースが正しく機能していれば、問題のあるロットを特定し、必要な範囲に限定して対応することができます。
品質問題が広範囲に及べば、製造会社の信用だけでなく、場合によっては企業そのものの存続を脅かす事態につながることもあります。
その意味でも、ロットトレース機能は製造業において非常に重要な仕組みです。
◆ロットトレースを実現するための前提条件
ロットトレースを実現するためには、まずロット別在庫管理が正しく行われていることが前提となります。
単にシステムに「ロットトレース機能」があればよいわけではありません。
現場で発生する入庫、生産、出荷の実績とロットNo.を正確に結び付け、それを継続して管理する必要があります。
例えば、次のような運用が必要になります。
① 原材料の受入
原材料を入庫する際に、仕入先のロットNo.または受入ロットNo.と受入数量をシステムに登録します。
同時に、ロットNo.ごとに現品票を添付し、現物とシステム上の在庫を一致させます。
② 生産完了
生産完了時には、使用した原材料や仕掛品のロットNo.と、生産実績数量をシステムに登録します。
さらに、生産された製品について生産ロットNo.を付与し、そのロットNo.の現品票を添付します。
これによって、
原材料ロット → 生産ロット
という関係がシステム上に記録されます。
③ 出荷
出荷時には、完成品のロットNo.と出荷実績数量をシステムに登録します。
さらに、出荷ロットNo.を出荷ラベルなどに表示し、出荷した現物とシステム上の記録を一致させます。
このように、ロットトレースを実現するためには、実績数量とロットNo.を常に正確に入力することが必要です。
さらに、ロット単位で在庫を管理し、現品票を現物に添付して管理しなければなりません。
したがって、ロット別在庫管理は通常の在庫管理よりも運用レベルが高くなります。
◆ロット別在庫管理に求められる生産管理システム
ロット別在庫管理は運用レベルが高いため、それを支える生産管理システムにも一定の機能が求められます。
主な要件としては、次のようなものがあります。
- ロット別在庫管理に対応していること
- ロットNo.を簡単かつ正確に入力できること
- バーコードなどを利用して、ロットNo.の入力負荷を軽減できること
- 原材料ロットNo.や生産ロットNo.ごとの現品票をシステムから印刷できること
- 出荷ロットNo.ごとの出荷ラベルをシステムから印刷できること
- ロットトレース機能に対応していること
特に重要なのが、ロットトレースの方向です。
例えば、完成品に品質問題が発生した場合には、
完成品ロット
↓
使用した仕掛品ロット
↓
使用した原材料ロット
というように、上流へ遡って調査できなければなりません。
これを逆展開トレースと考えることができます。
一方、ある原材料ロットに問題が発見された場合には、
原材料ロット
↓
使用した仕掛品ロット
↓
生産された完成品ロット
↓
出荷先
というように、下流へ追跡する必要があります。
こちらは正展開トレースです。
したがって、ロットトレースシステムでは、
完成品から原材料へ遡るトレース
と
原材料から完成品・出荷先へ展開するトレース
の両方に対応できることが重要になります。
◆システム以上に重要なのは運用体制
ロット別在庫管理では、システム機能だけを整備しても十分ではありません。
原材料の受入時にロットNo.を登録する。
生産時に使用した原材料ロットを記録する。
生産された製品に生産ロットNo.を付ける。
出荷時に出荷ロットを記録する。
そして、それぞれの現品票やラベルを現物に正しく添付する。
この一連の作業がどこか一つでも欠ければ、ロットトレースは成立しません。
つまり、
ロットトレース機能があることと、ロットトレースができることは同じではありません。
システムに正しいデータが入力され、現物とシステム上の在庫が一致して初めて、ロットトレースが可能になります。
ロット別在庫管理は運用レベルが高いからこそ、システム導入前に現場の運用方法を十分に検討し、関係者がその目的と手順を理解しておく必要があります。
◆ロットトレースは「機能」ではなく「仕組み」
ロットトレースというと、システムにトレース機能を追加すれば実現できるように思われがちです。
しかし、実際にはそうではありません。
正しい在庫管理
↓
正しいロット管理
↓
正しい実績入力
↓
現物とシステムの一致
↓
ロットトレース
という一連の仕組みがあって初めて成立します。
したがって、ロットトレースに取り組む際には、システム機能だけを見るのではなく、現場で継続して運用できる体制を作ることが最も重要です。
ロットトレースは高度な機能であるからこそ、十分な準備と明確な運用ルールを整えたうえで導入する必要があります。
- カテゴリー
- 生産管理入門


