第9 回 基準日程生産計画(MPS)と資材所要量計画(MRP)

◆基準日程生産計画(MPS)とは
基準日程生産計画(MPS:Master Production Schedule)とは、完成品を「いつ、何個生産するのか」を決める生産計画です。
通常、受注した数量に合わせて生産することになります。
しかし、受注にそのまま生産を合わせるだけでは、さまざまな問題が発生します。
例えば、
- 受注の変動によって、生産負荷が大きく変動する
- 一度に大量の受注が入った場合、分割して生産したい
- 納期に備えて安全在庫を持ちたい
- 需要予測に基づいて、受注前に先行生産したい
といったケースです。
そこで必要になるのが、基準日程生産計画です。
MPSは、**受注と実際の生産の間に入る「クッション」**のような役割を果たします。
受注された数量をそのまま生産するのではなく、在庫、生産能力、納期、需要予測などを考慮しながら、完成品をいつ、どれだけ生産するかを計画するのです。
◆基準日程生産計画の平準化
MPSを作成するうえで重要になるのが、生産負荷の平準化です。
受注数量をそのまま日々の生産数量にすると、ある日に生産量が集中し、別の日には仕事がなくなるということが起こります。
そこで、完成品の生産数量を日別などに振り分け、生産量をできるだけ平準化します。
平準化の方法にはさまざまなものがありますが、代表的なものの一つが、カンバン生産で行われる日別のパー割りです。
カンバン方式では、現場で必要なものを必要な量だけ生産するというイメージが強いかもしれません。
しかし、そのためにも、上流では生産全体を安定させるための計画が必要になります。
つまり、カンバン生産においてもMPSは生命線となる重要な処理なのです。
◆資材所要量計画(MRP)とは
MPSによって完成品の生産数量と生産日が決まると、次に必要になるのが、材料や部品を「いつ、どれだけ用意するか」という計画です。
これを行うのがMRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)です。
MRPでは、MPSをもとに製品の部品表(BOM)を展開し、現在の在庫や発注残などを考慮しながら、
「何を、何個、いつまでに必要とするのか」
を計算します。
さらに、必要な部品を自社で生産するのか、外部から購入するのかに応じて、生産数量や生産日、あるいは資材の必要数量や必要日を算出します。
MRPは古くから生産管理で利用されてきた基本的な仕組みですが、現在でも非常に有効な考え方です。
◆MRPには「オーダ方針」がある
MRPでは、単純に必要数をそのまま発注・生産するわけではありません。
品目ごとに、どのような単位で発注・生産するのかを決める必要があります。
例えば、
- 日数まとめ
- ロットまとめ
- 仕損率
- 安全在庫
などの条件を設定します。
同じ「10個必要」という結果が出ても、1個ずつ作るのか、一定期間分をまとめて作るのか、安全在庫を考慮するのかによって、実際の発注数量や生産数量は変わってきます。
このような条件を考慮しながら、MRPは実際の生産・購買につながる計画を作っていきます。
◆海外でMPS・MRPを導入する際の注意点
ここで重要になるのが、前回まで説明してきた在庫精度です。
MRPは、現在の在庫数量が正しいということを前提として計算されます。
例えば、システム上では100個あることになっていても、実際には80個しかなければ、MRPはその100個を前提として計算してしまいます。
その結果、必要な材料が不足したり、逆に不要な材料を発注したりする可能性があります。
そのため、MRPを有効に機能させるためには、まず在庫精度を高い水準に保つ必要があります。
一般的には、在庫精度98%以上が一つの目安とされます。
これが、海外の生産現場でMRPを導入することが難しいと言われる理由の一つです。
◆MRPは「最初に導入するもの」ではない
したがって、海外の工場にMRPを導入する場合には、いきなりMRPを稼働させるのではなく、まず在庫精度を高めることから始める必要があります。
在庫精度が十分でない段階では、最初はマニュアルによる発注や生産計画で対応しながら、
「正確な在庫を維持できる仕組みを作る」
ことを優先します。
そして、在庫精度が向上し、マスターや実績入力も安定してきた段階で、MRPを導入する。
この順序が重要です。
MRPは非常に有効な仕組みですが、正しいデータがなければ、正しい計算結果は出てきません。
つまり、
正確なマスター
→ 正確な在庫
→ 正確な生産実績
→ MPS
→ MRP
という土台があって初めて、MRPは本来の力を発揮するのです。
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