第6回 採番について

◆タイの複雑なドキュメントNo.(採番)

請求書(Invoice)などに固有の番号(発行番号)を振り分ける作業を「採番」と呼びますが、これについても日本とタイとでは大きく運用方法が異なっています。税務当局からあらぬ疑いの目をかけられないよう、慎重な処理と対処が必要です。
日本国内で行われる採番作業は、システムの導入時から順に番号を振り分けていく方法が一般的です。発行したInvoiceなどにミスがあった場合は取り消しをし、それにリバイス(修正)ナンバーを振るなどして重複する事態を予防します。
これに対し会計を月次処理し、月ごとの納税申告が義務づけられているタイでは、発行されるInvoiceや領収書(Receipt)に振られる固有の番号は、月ごとの連番となってなくてはなりません。しかも、発生日順に割り振られるというルールとなっているため、特別な理由がない限り欠番の存在は認められていません。

◎タイにおける「採番」の事例
IV201605-001(冒頭のIVはInvoiceを表す)
※IVと番号の前に「企業名」などを表す記号が入る場合があります。

◆ドキュメントNo.(採番)の修正時の苦労

このように、月ごとの連番が採番のルールとして定常化されているため、書類にミスがあった場合でも差し替えられたInvoiceなどの発行番号が改められることはありません。ここに、不正が介在する余地があるとされています。
例えば、Invoiceを発行した後に取引先から「単価を下げて欲しい。Invoiceは同じ番号で再発行してください」と要請があったとします。納品側はこれに応じ、新たにInvoiceを発行しますが、発行番号は変わりません。つまり、同一の番号で内容の異なるInvoiceが同時に複数枚、存在する事態が発生するのです。

これら一連の場合の手続は、もっぱらタイ人の事務当事者間で行われます。日本人が介在することは、事柄の性格上、通常あまりありません。こうして、過大出荷、バックマージンなどの不正が行われるとされています。
予防策としては、毎月末に行う在庫管理の徹底のほか、採番の不正に対応したソフトウエアの導入以外にありません。取引件数の多い事業所であれば、リスクはなおのことです。転ばぬ先の杖とした対応が必要です。