第7回 タイでの固定資産

◆低額な固定資産

企業が固定資産を取得(購入)したとき、当該資産については日本国内と同様に減価償却されるというのがタイの会計ルールとなっています。ただし、その内容は大きく異なります。同じ「減価償却方式」だからと安易に考えていますと、その膨大な作業量に当惑することは間違いありません。

まず、挙げられることに、タイにおける固定資産認定の基準額が日本よりも低額に置かれているという点があります。おおよその目安は「1000バーツ(約3300円)から5,000バーツ(約16,500円)」とされており、ちょっとした多機能ペンや事務用品、ホワイトボードなど大半の備品類が該当することになります。
それだけではありません。償却資産となれば、その一つ一つに資産番号を振り、管理・仕分けしなくてはなりません。その入力だけでも大変な作業となってきます。当然に、ミスを犯す可能性も増してきます。

◆定額法だが日割り計算が複雑

さらには、減価償却そのものの仕組みも異なります。日本における減価償却は、その資産の性質や評価によって「耐用年数」が定められています。例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の事務所用に供するものは50年、事務机や椅子の金属製のものは15年、パソコンは4年といった具合です。しかも、1年に一度、申告をすれば事足ります。
一方、タイの会計申告は、何度もお伝えしていますように月次申告が基本的なルールです。主に「定額制」を採るため、ともすれば簡単だと受け止められがちですが、そこから先が極めて煩雑な仕組みとなっています。
タイにおける減価償却は、いわゆる「日割り計算」において行われます。1カ月が28日の月もあれば、30日や31日の月もあります。これを月ごとに当該日数で割って計算・申告しなくてはなりません。正しく申告しなければ経費としては認められません。この作業が計り知れないほどの膨大な事務量となって、担当者の負担となります。ソフトウエア上も煩雑なだけに、しっかりとしたシステムの構築が求められます。

◆タイにおける減価償却制度の特徴

1)固定資産の認定基準額が日本よりもはるかに低額
2)月次処理・申告をしなくてはならない
3)しかも、月ごとの日数に応じた日割り計算が求められる