第15 回 BS(貸借対照表), PL(損益計算書), TB(残高試算)

企業活動の経営成績を示す情報の元となるのが、貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)。そして、勘定科目ごとにまとめた残高試算表(TB)です。 いずれも、タイで採られている会計実務でも目にすることができますが、日本のそれとは少し内容が異なる点もあり注意が必要になります。 BS = Balance Sheet, PL = Profit and Loss, TB = Trial Balance ◆BS 貸借対照表について 資産(Assets)、負債(Liabilities)、資本(Equity)が大きな柱。枝番として、それぞれ1000~、2000~、3000~がよく使われています。 会社スタート時に残高があるのは資産と資本。負債はゼロからの始まります。 商品が売れれば売掛金となって資産に計上され、入金があった時点で銀行口座に振り返られます。 ①[1,000THBの商品を売ったときの売掛金仕訳] VAT 7% Debit (借方)                  Credit (貸方) Account Receivable 1,070 THB (BSの資産)    Sales 1,000 THB (PLの収入) Sales Tax 70 THB (BSの負債) ②[1,070THBの売掛金が入金したときの仕訳] Debit (借方)                  Credit (貸方) Bank Account    1,070 THB (BSの資産)    Account Receivable 1,070 THB (BSの資産) 上記の仕訳で何が起こったのでしょうか。 ①で売掛金が発生したのですが、BSとPLに仕訳が発生していますのでDebit(借方)とCredit(貸方)に同じ値が発生します。 ②では売掛金が銀行口座に振替られます。BS内で資産の勘定科目を振り替えただけ。この振替処理で売掛金がなくなります。 […]

第16 回 Unamortization Tax

日本の消費税に当たるのがタイの付加価値税(VAT)。 対象が物販であるかサービスであるかに関わらず、実際にあった取り引きに対しては月次決算と申告が義務づけられています。 ここで注意が求められるのは、物販とサービスによって、会計上の処理に大きな違いがあるということ。 日本にはない仕組みですので、正しい理解と運用が求められます。 ◆物販のケースのVATについて モノが介在する取り引きではVATは先払いとなりますから、取引時に発行される請求書には「Invoice / Tax Invoice」との記載が必要です。 一方、入金確認後の「領収書」についてはVATの処理はもう終わっているため、単に「Receipt」とするだけで足ります。 勘定科目上も当初からVATとして処理しておくので何の問題もありません。 ◆サービスのケースのVATについて これに対し、サービスの場合はVATが後払いとなります。 VATが後払いとなるため、当初発行する請求書は単なる「Invoice」という記載となり、入金があってから取引先に交付する「請求書」に「Receipt / Tax Invoice」と明示する必要が生まれます。 会計処理も同様で、Invoice発行時点では仮払い勘定科目(Unamortization Tax)に当て、入金があってからこれをVATに振替えという手続きを踏みます。 サービスに対する一連の会計上の手続きを、俗に「Unamortization Tax」と呼んでいます。 タイ人の経理担当者の間も「アモーTax」と省略されて呼ばれるのがそれです。 なお、サービスとは言いますが、それが示す範囲は広範で、機器等のレンタルなども含みます。 いわゆる物販以外は全てサービスと考えておくのがよいでしょう。

第17 回 タイ式決算書と日本式決算書との違いについて

タイ式の決算書と日本式ではかなりの差があります。 これは日本が管理会計を主体として発展しているのに対し、タイでは税務のための会計になっていることが起因していると思われます。 ◆タイ式貸借対照表(BS) Assets(資産)、Liablities(負債)、Capital and Equity(資本及び剰余金)に分けて集計し、製造原価(Cost of Goods Sold)の表示はない。 ◆タイ式損益計算書表(PL) Sales(売上高)、Cost of Goods Sold(製造原価)、Expense(管理費)、Corporate Tax(法人税)に分けて集計し、粗利益と税引後利益が表示されます。 営業外収益はSales(売上高)に含まれます。 ◆日本式貸借対照表(BS) Assets(資産)、Liablities(負債)、Capital and Equity(資本及び剰余金)に分けて集計し、製造原価(Cost of Goods Sold)は表示されます。 ◆日本式損益計算書表(PL) Sales(売上高)、Cost of Goods Sold(製造原価)、Expense(販売費及び一般管理費)、Non operating profit and loss(営業外収益及び費用)、Extra ordinary profit and loss(特別利益及び損失)、Corporate Tax(法人税等)に分けて集計し、粗利益・営業利益・経常利益・税引前利益・税引後利益が表示されます。 日本の決算書は日本人から見るとまったく普通なのですが、特に損益計算書において日本式の方がかなり細かく管理されています。 一方タイ式はかなりおおざっぱで、拍子抜けします。しかし、ローカルの小さい会社でも会計処理は行っていますので致し方ないところです。 では日本式の会計をタイで実施できないかとというとそうでもなく、日本式で会計処理を行い、決算時に別途タイ式にしてAuditorに提出してもよいです。 海外では管理レベルに合わせ、柔軟な対応が望まれます。